自然環境との調和 山と川に挟まれた立体的な敷地に家並みが重なる |
歴史を伝える建造物 (左)本町の旧紙屋鈴木家住宅。主屋のほか土蔵や座敷、茶室、釜屋など、大商家 の生業・生活に関する建物一式が残る (右)伊那街道と鳳来寺街道の分岐点となる西町の三叉路に立つ道標 |
足助は、三河から信州を結ぶ伊那街道(中馬街道)の中継地であり、物資運搬や庶民通行の要所として栄えた在郷町です。重要な交易物であった塩はここで詰め換えられ、「足助塩」「足助直し」と呼ばれました。近世後期から有力商人が現れ、資本の蓄積が進みました。 安永4年(1775)の大火直後から町は再建され、今も町並みには江戸時代中期から明治末までに建てられた建物が数多く残り、全体の34%を占めています。大正期や戦後のものでも伝統的な町遺影の形式を路襲するものもあり、古い町並みの景観が保たれてきました。 明治44年(1911)に国鉄中央線が開通すると、物資輸送基地としての機能は衰退しますが、その後も林業・養蚕業の流通市場や金融資本が蓄積し、東加茂郡の中心として歩み続けました。昭和5年の足助大橋の完成に伴い、県道飯田街道(旧伊那街道)は現国道153号に付け替えられ、足助の町並みは次第に主要交通路から外れていくことになりましたが、それが現在まで町並みが残る一つの背景となったのです。
観音山から見た町並み(昭和初期)
西暦 | 年号 | 足助の歴史 |
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11世紀末〜 14世紀中頃 |
尾張から山田重長が足助に入り、足助氏を称する。8代重政まで領有 | |
1466 | 文正元年 | 足助八幡宮本殿(重要文化財)が再建される。 |
戦国時代 | 足助鈴木氏が足助城に本拠地をおき、香積寺境内に居館を構える。 | |
1590 | 天正18年 | 鈴木氏が徳川家康の関東入国に従い、足助城は廃城となる。 |
1681 | 天和元年 | 本多氏が五千石で陣屋を構える。この頃に東町が本町に改称。 |
近世 | 塩など物資を運搬した伊那街道の重要な中継拠点として栄える。 | |
元禄(1688-1704) | 宿場的要素に加え、商業の中心地的性格が強まる。 | |
1755 | 安永4年 | 大火により、町並みのほとんどが焼失。 |
文化文政期〜 明治期 |
多くの町家が建てられ、建造物群として集積される。 | |
1878 | 明治11年 | 東加茂郡役所が設置され、三河地域の行政の中心のひとつとなる。 |
明治中期 | 飯田街道(旧伊那街道)が、新町の西側と田町の東側に付け替えられ、新しい街道(新道)沿いに新たな町並みが形成される。 | |
1911 | 明治44年 | 国鉄中央線の全線開通により、物資輸送基地としての機能が衰退、その後は、在郷町としての性格がより強くなる。 |
大正〜昭和期 | 巴川両岸に数千本のもみじを植樹し香嵐渓と命名。東海地方随一の紅葉の名所として整備され町並みも賑わいをみせる。 | |
1930 | 昭和5年 | 足助大橋の完成に伴い、県道飯田街道(旧伊那街道)は巴川左岸の現国道153号に付け替えられ、町並みは次第に主要交通路から外れる。 |
1955 | 昭和30年 | 東加茂郡足助町・阿摺村・賀茂村・盛岡村が合併し旧足助町となる。 |
2005 | 平成17年 | 旧足助町が豊田市と合併し、豊田市足助地区となる。 |
足助の町家建築の特徴
安永4年(1775)の大火後に復興された町並みは、塗籠2階建の町家を骨格としています。安永の大火直後から防火を意識したいぶし瓦の桟瓦葺きが普及し、屋根勾配は5~6寸と比較的急になっていることも特徴の一つです。1階には庇を設け、蔀戸の痕跡を残す家が多く商家町の特徴を示しています。
平入や妻入が混在する町並み
街道沿いに平入と妻入が混在する変化のある景観は足助の町並みの特徴です。
妻入の主屋敷地の規模や形状の関係から、間口が5間以下で敷地の奥行きが深い場合に妻入形式となる傾向が見られます。また、商業地としての需要が高まる中で、土蔵などを居宅や店舗に転用したとみられるものもあります。 |
平入2階建ての町家新町から田町では、上屋と下屋にわずかに段差をつけた錣葺き形式の軒高の低い主屋が残されています。これらは安永4年の大火前の構成を伝える可能性が高く重要なものです。 |
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錣葺き形式の主屋新町から田町では、上屋と下屋にわずかに段差をつけた錣葺き形式の軒高の低い主屋が残されています。これらは安永4年の大火前の構成を伝える可能性が高く重要なものです。 |
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川沿いの石垣・石組み階段と家並み
石垣も町並みを構成する重要な要素です。特に足助川沿いにおいては、近世末期から近代初頭にかけて川岸に石垣を築き、川に張り出すように座敷などが建てられるようになり、石組み階段とともに、生活と川との繋がりを映した景観をつくり出しています。